効果的な流量制御の価値

炭化水素工学, 2023年8月


効果的な流量制御の価値

世界のエネルギーミックスにおいて、液化天然ガス(LNG)の量が増加しています。近年、LNGの輸出量が劇的に増加し、2022年までには、欧州への輸出量は、米国単独でも2倍に増加することが予想されています(1。

2020年代末までには、世界の天然ガスの需要は11%増加すると予想されています(2。天然ガスの需要が高まりLNGの重要性が増した結果、2030年までには、液化量は2倍に、再ガス化量は1.5倍になることが予想されています。

今後数年間に液化、再ガス化、輸送インフラへの投資が見込まれることからもわかるように、LNGはエネルギー転換における脱炭素化の懸け橋として受け入れられつつあります。天然ガスを使用するには、液化したガスを再び気化する必要があるため、世界の多くの地域には必要量を取り扱うためのインフラが完備されていません。

液化、抽出から再ガス化、輸送、流通までの各段階で効果的にプロセスを制御するためには、プロセス全体にわたる信頼性の高い流量制御が必要です。

極低温バルブの制御

 LNGの貯蔵・輸送には、ある要件があります。バルブ及び関連装置は、極端な低温に耐えられるものでなければなりません(ガスを液化するには-162℃まで冷却する必要があります)。

極低温安全弁にはしばしば、上記のような極端な低温でも本体の強度を維持する、316ステンレス鋼が使用されています。危険環境であるため、LNGの流量制御に使用するバルブは、非常に低温でも確実に機能しなければなりません。極低温用バルブは、BS6364等の安全規制に準拠している必要があります。このようなバルブを制御するアクチュエータもまた、危険が持続する状況での安全且つ信頼性の高い動作が要求されます。

大量の生ガスを輸送するために使用するバルブは、基本的に直径36インチ~72インチであり、非常に高い圧力で送られます。圧縮トレインや極低温システムを用いて天然ガスに圧力をかけ冷却することにより、天然ガスを液体に変えることができます。

このプロセス全体をとおして、高圧ガスは非常に危険な媒体であるため、緊急遮断システムに繋がる安全機能が必要不可欠です。LNG事業には、1960年代に最初のLNGプラントが建設されて以来、ロトルクがその市場に提供し続けてきた実績のあるソリューションが必要です。大型バルブは、ロトルクの空圧式アクチュエータを用いた緊急遮断システムに必要な高速且つ高トルクで閉じることができます。

世界中のLNGターミナルの貯蔵及び再ガス化設備で使用される極低温バルブ(ボール弁及びバタフライ弁)は、ロトルクの空圧式スコッチヨークアクチュエータ(GP及びCP)により運転されています。GP及びCPアクチュエータは、耐腐食シリンダーを搭載し、ATEX認証済みであるため。危険場所での使用に適しています。 GNL Quinteroはチリ国内で最大級のエネルギーセキュリティ会社であり、同社の拠点であるQuintero LNGでは、日常業務と安全遮断のために、信頼性の高い頑丈なパイプライン用バルブアクチュエータを必要としていました。極低温バルブは、高塩分濃度の沿岸区域から気温変動の大きい乾燥した砂漠地帯に至るまで、過酷な環境に設置されました。 遠隔地では、従来型電源が不足しているため、太陽光などの再生可能なエネルギー源が必要でした。

Quintero湾のLNGコンプレックスには、タンカーからLNGを受け取る海上ターミナルや、再ガス化してパイプラインによりてチリ中心部に供給するためのプラントが含まれています。

提供されたアクチュエータはCP及びGPレンジのそれであり、その大半がQuintero湾海洋ターミナルとその隣の貯蔵プラントの極低温用ボール弁とバタフライ弁を操作しています。また、海洋環境に晒されるため、提供するパッケージ型制御システムや部品には厳選した耐腐食材料を使用する必要がありました。

中流のLNGパイプライン全体におけるアクチュエータの必要性

天然ガス輸送用のパイプラインは大型であり、数百または数千マイルに及びます。また、これらパイプラインはしばしば遠隔地や立ち入り不可能な場所にあり、 電源や圧縮空気さえも入手できないことがあります。 パイプラインのガスが、アクチュエータの唯一の駆動源である場合もあります。パイプラインでみられる大型バルブの場合は、過酷な使用条件用アクチュエータが、特に、塩分の多い沿岸地域(腐食の可能性が高い場所)や、温度変化の激しい高温で乾燥した砂漠地域などの過酷な環境で、日常デューティや安全遮断デューティを実行しています。

例えば、ベネズエラ北部の極低温LNGパイプラインの重要箇所にはアクチュエータが設置されていました。 このパイプラインは、複数の場所間でLNGやガスを運搬しています。これらアクチュエータは、パイプラインの至る所にあるボール弁を制御し、ESD動作を発動させることにより、LNGの生産のあらゆる段階で必要とされる高い安全性、信頼性、セキュリティを提供しています。必要不可欠なこのフロー制御によって動作の信頼性と効率を最大化されます。アクチュエータが提供する精度と制御によって人為的ミスをなくし、自動化プロセスの精度を向上します。

インテリジェントアクチュエータが輸送にもたらす価値

 最も一般的なLNGの長距離輸送方法は、船舶輸送です。 このような特殊な船舶には、プロセス制御用アクチュエータが設置されています。たとえば、ロトルクのIQアクチュエータのようなインテリジェント電動アクチュエータは、LNG輸送中の輸送船に供給する液化ガスの流量を安全、確実且つ効果的に制御するために必要不可欠です。LNGの流量制御にインテリジェントアクチュエータを使用するその他のメリットは、データログからリアルタイム及び過去の様々なフィードバックデータ (警告、バルブのトルク分布、バルブの作動または運転回数等)を得られることにあります。IQレンジアクチュエータは防爆認証を取得しているため、最過酷条件でも長期信頼性が保証されます。

その他の選択肢として、電動操作の容易さと、油圧式制御の正確さ、更には機械式スプリングリターンまたはアキュムレータのフェイルセーフ動作の信頼性を兼ね備えた電油式アクチュエータもあります。スキルマチックSIアクチュエータの一般的な使用用途は、機能安全関連緊急遮断(ESD)入力や、遠隔操作式遮断弁(ROSoV)などであり、危険場所認証を取得しています。スキルマッチSIは、これらの用途で使用するための単一または2重入力ESDオプションと部分ストロークテスト(PST)機能を備えています。

再ガス化段階におけるアクチュエータの重要性

再ガス化はしばしば、LNGの取扱に特殊な要件が設けられた沿岸の輸入ターミナルで行われています。 アクチュエータの機能は、これらプロセス全体をとおして、安全で信頼性の高い動作の重要部分であり、選定したフロー制御製品には高い安全基準が求められています。 自動化されたタンクファームでは、アクチュエータが常にs存在しています。必須安全要件を満たすために、通常の流量制御、モジュレーティング動作、フェイルセーフ動作のオンオフを行っています。また、タンクファームでは、危険状況では必要不可欠な緊急遮断(ESD)等の安全関連タスクにもインテリジェント電動アクチュエータを使用しています。

LNGを扱う現場では、数百台のアクチュエータを同時に制御するには、制御・監視センターが必要です。再ガス化ユニット、200,000 m3のLNG貯蔵タンク2基、及びLNG船舶の積み込み・積み下ろしのための埠頭を備えたマレーシアのペンゲラン深海石油ターミナルのようなLNG現場では、ロトルクのマスターステーション制御システムが用いられています。 マスターステーションは、フィールドネットワーク(パックスキャン)を用いて数百台のインテリジェントを遠隔制御しており、マスターステーションの制御下にあるこれらアクチュエータがLNGの流量を制御しています。この種の技術は、LNG部門では必要不可欠な信頼性の高い強固なプラント制御及び監視を提供しています。

温室効果ガス排出削減のためのインテリジェントアクチュエータ

また、流量制御製品は、温室効果ガスの排出削減にも役立ちます。電動アクチュエータは、不要な排出を削減するための選択肢になります。B スプリングダイヤフラム空圧式アクチュエータを電動アクチュエータに交換することにより、ブリードガスの排出を防止することができます。調整弁の天然ガス式空圧アクチュエータを電動アクチュエータに交換(即ちレトロフィット)することにより、メタンや揮発性有機化合物(VOC)の排出を削減またはゼロにすることができます。

プロセスの全体をとおして、排出量を大幅に削減することができます。ベルギーでは、液化天然ガスターミナル、4000kmパイプライン、地下貯蔵施設、その全てをロトルクが更新いたしました。ベルギーの無人ガス減圧ステーションでは、低圧で稼働するネットワークを通過できるように、または最終消費者の設備に輸送できるように、天然ガスを減圧しており、この減圧ステーションのボイラーのバタフライ弁を制御するために、IQTパートターンインテリジェントアクチュエータが設置されました。

この作業によって天然ガスが冷却されるため、下流の温度を指定範囲内に保つため、事前にボイラーで天然ガスを温めておく必要があります。この現場に設置されていたアクチュエータは、ガス駆動式の空気圧アクチュエータであり、意図せず、環境中に温室効果ガスを排出していました。本作業の環境への影響を軽減するため、ロトルクサイトサービスがこの現場に電動アクチュエータを設置しました。 バルブを制御するアクチュエータ(今では、より正確な調整機能を実行しています)は、より信頼性が高く、以前の空気圧アクチュエータよりも排出量を削減することができます。

IQTアクチュエータを設置することにより、非常に正確な流量制御、ゼロ排出、シンプルなセットアップ、診断、信頼性の高い操作、その全てが可能になります。いくつかの現場では、ロトルクサイトサービスが、既設バルブにIQTを設置しました。 IQTは、電源断時でも常時開度追跡が可能です。IP66または68(ダブルシール構造。水深7m下に72時間)の防水保護等級を有しており、国際防爆規格にも適合しています。

LNG取扱現場における保守業務

本記事では、LNG部門におけるこれら資産の重要性が強調されていますが、これら資産の保守と、適切な操作も同様に重要です。LNG内のインテリジェント流量制御資産は、動作の信頼性と効率を最適化します。LNGの流量制御資産は、過酷な動作及び環境条件で、日々稼働しています。これら資産はしばしば、不快な極端な温度条件や過度の振動下で 使用されており、信頼性の高い動作が要求されます。資産の効果は、LNGの流路のあらゆる地点で確実に使用できるようにするための保守に左右されます。 資産の故障や陳腐化は、品質低下、金銭的損失、風評被害などの、危険な影響を及ぼします。 突然の中断は、金銭的負担がかかり、好ましくない状況です。しかし、(信頼性向上サービスプログラムのような)一生涯の資産管理プログラムによって、性能の改善、アップタイム(稼働時間)の増加、保守費の削減が期待できます。これらのサービスプランによって出費を安定させることができます。流量制御製品のサービスプランは、資産のライフサイクルに合わせて包括的にアプローチするもので、柔軟且つお客様自身が保守を決定できるものでなければなりません。

結論


天然ガス市場における需要の増加に対応するため、より多くの天然ガスを抽出、液化、輸送、再ガス化する必要があります。これらプロセスには、困難な状況でも機能し、サプライチェーン全体の総排出量を最小化することができる正確で効果的な流量制御が必要です。

LNG事業は複雑ですが、アクチュエータのような効果的で信頼性の高い流量制御資産によって、安全で効率的且つ信頼性の高い方法でLNGを生産、輸送、供給することができます。

[1] US doubles LNG exports to Europe (washingtonexaminer.com)

[2] IEA World Energy Outlook

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