Danny Nicholas(ロトルク)の質疑応答

水素及び燃料電池の革新, 2022年6月


Danny Nicholas(ロトルク)の質疑応答

Danny Nicholasは2022年3月に、EMEA(欧州、中東、アフリカ)向け水素関連機器の事業開発部長としてロトルクに入社しました。Danny Nicholasは、ロトルクに入社する以前は、Swagelok Manchesterで、お客様と連携して、グリーン水素のバリューチェーンで利用するための技術の向上と機器の設計に携わり、テクニカルサポート及び事業開発チームの中心的役割を担っていました。また、Dannyは、マンチェスター燃料電池イノベーションセンター(マンチェスターメトロポリタン大学の一部)及びマンチェスター大学グラフェン施設における調査作業もサポートしていました。

ロトルクが市場に提供する製品について説明して下さい。

当社は、完成された水素サプライチェーンを通して、水素関連機器メーカー及びバルブメーカーに重要フロー制御ソリューションを提供しています。ロトルクは、60年以上に渡って、様々な業界に、高信頼性、高精度、高効率のフロー制御製品を提供してきました。当社は、フロー制御技術におけるグローバルリーダーであり、水素の過酷且つミッションクリティカルなアプリケーションのサプライチェーンにおけるパートナーとして位置づけられています。当社では、電動及び空圧式アクチュエータ等の関連製品は勿論、電磁弁、スイッチボックス、ニードル弁、ボール弁、圧力レギュレータ、フィルターレギュレータ等の重要計装製品も取り扱っています。水素の生産、貯蔵、輸送には課題があることはよく知られていますし、適切に管理しなければ安全上の問題が発生する恐れがあります。水素は、燃料として使用するには、非常に可燃性が高いです。また、水素は無臭、無色、無味であるため、漏れの検知が困難です。当社には、全段階を安全に制御し、リスクを低減するための知識と経験があります。私は、水素への注目が高まり、「持続可能な未来を」というメッセージが発せられるようになった時期にロトルクに入社しました。当社は英国のHFCA(水素・燃料電池普及促進協会)の一員、即ち、英国の水素業界と製造システムを取り巻くイノベーションの中心に立っています。

詳細の説明が可能なプロジェクトまたはケーススタディはありますか?

フランスの機器メーカーであるAREVA H2Gen (現社名:Elogen)のグリーン水素電解スキッドに、最近、当社のCVLプロセス制御用電動アクチュエータが設置されました。電解には非常に正確な制御が必要であるため、スキッドに取り付けたアクチュエータは、高精度、フェイルセーフ動作対応、そして高デューティ比でなければなりませんでした。ロトルクアクチュエータが提供する精度は、このような課題を満たしていました。特にCVLのようなプロセス制御用アクチュエータは、電解で要求される精密なモジュレーティング制御と繰り返し性を実現しています。

各電解スキッドでは、グローブ弁にCVLアクチュエータ3台が取り付けられており、電解に用いる圧力と水量の調整を行っています。当社電動アクチュエータの多くは、必要不可欠な安全認証(CVLはATEX ⅡC認証を取得しています)を提供していますが、これは、水素には揮発性があるために水素が存在する環境では必須条件です。水素アプリケーションでは、常に、安全を最優先に考える必要がありますが、当社アクチュエータはこのような課題を満たしております。

幅広い脱炭素部門において、どのような傾向が目立っていますか?


一般的に、脱炭素化においては、考慮すべき要素は複数あります。脱炭素化には様々なアプローチ(取り組み)がありますが、その全てをかけ合せて、全体としての好影響を生み出すべきです。水素及び再生可能エネルギーのメリットは、炭素の回収・貯蔵、工業及び国内アプリケーションの効率の向上、そして世界的な(二酸化炭素)排出量削減と並んで、これら複数のアプローチにより得たメリットのうちの1つです。

単に、何色の水素を生産するかという点を考慮するのではなく、それぞれの生産方式におけるカーボンフットプリントを考慮すべきである、という議論があります。例えば、既にインフラ資産が整備されているため、ブルー水素が、短期的には、大きな牽引力となるでしょう。反対に、グリーン水素は、現在、規模拡大の最中であり、まだ我々のニーズを賄うだけの量を生産するまでには至っていません。我々は、様々な水素生産方法をバランス良く用いる必要があり、このバランスこそ、業界が現在、見極めようとしていることなのです。

水素部門が直面している主な課題はどのようなものでしょうか?
現段階で私が目の当たりにしている2つの主な課題とは、グリーン水素の拡大と、水素の生産・使用を拡大し、コスト効率を上げることです。グリーン水素の生産者はまだ比較的少なく、(生産への投資と、最終製品の価格との両面において)コスト効率の良い方法で規模を拡大する必要があります。

インフラの拡大という面では、既存のガスネットワーク、パイプライン、そしてシステムに様々な試験を実施しなければなりません。水素の明らかな危険点は、可燃性物質であり爆発の可能性があることです。そのため、生産、貯蔵、使用の過程で漏れのリスクを最小化、若しくはゼロにする必要があります。それゆえ、安全に生産・使用するには、水素管理の全段階で、高レベルの制御が必要不可欠となります。

2021年を振り返って思うことはありますか?


2021年は、水素の将来の方向性、低炭素エネルギー、そして脱炭素化の拡大、という面で重要な時期でした。2021年を通して、業界、大規模組織、そして政府が一丸となって、水素業界がやり遂げようとしている目標(メッセージ)を模索し、このメッセージを広範囲に発信していることを実感しました。世界各国の政府が、水素を利用したエネルギーへと、政策の転換し始めました。水素の重要性を伝える沢山の説明会、展示会、会議が開催されましたが、このような傾向は、水素業界の将来に関する議論を加速する第一歩となりました。

また、中小企業や新興企業の数も増加しました。彼らの設備は小規模であり、(より規模の大きい長期プロジェクトに投資が行われ、構築されるにつれて)彼らが現在の立ち位置と将来の立ち位置とのギャップを埋める存在であるかのように感じます。例えば、2021年には、携帯式水素燃料補給ステーションを提供する企業が成長を遂げました。同ステーションは、現在のニーズに最適な、拡張可能な携帯式ユニットです。

2022年以降の目標を教えて下さい。

当社は、水素が目まぐるしく変化する部門であることを理解しています。当社の最終目標は、水素アプリケーションにミッションクリティカルなフロー制御製品を提供するグローバルサプライヤーとなり、当社の業界で「サステナビリティのリーダー」として評価されることです。ロトルクが、より多くのシステムを構築するために、生産の拡大に乗り出した機器メーカーの発展し続ける現況をサポート致します。当社は、会社の規模や、世界中に拠点を構えるグローバル企業であること、そして安全で効率の良いフロー制御ソリューションを提供してきた実績を考慮すると、このようなサポートに最適なポジションにいると言えます。

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