中国の東西パイプラインに設置したインテリジェント電動バルブアクチュエータ

中国の東西パイプラインに設置した電動バルブアクチュエータ

中国の東西パイプラインに設置した電動バルブアクチュエータ

  • 部門: 石油&ガス - 中流(輸送)
  • カテゴリー: 電動アクチュエータ 
  • 製品: IQ - Standard, IQ Pro Modulating

概要

東西パイプラインネットワーク(WEPP)は、これまで中国で計画されたプロジェクトの中で最大かつ最も重要なガス産業プロジェクトです。このプロジェクトは中国西部の開発を目的としており、中国東部にある市場と西部にある資源を結ぶ4つのガスパイプラインを建設します。この数千キロメートルにも及ぶパイプラインは台地、山地、砂漠、河川などの様々な地形を通り、新疆ウイグル自治区のタリム盆地とトルクメニスタンを長江デルタ地域及び珠江デルタ地域に接続します。


概要

このパイプラインプロジェクトは、PetroChinaの子会社であるPetroChina West-East Gas Pipeline Companyが開発しました。中国最大の国営石油・ガス生産会社であるChina National Petroleum Corporation (CNPC)がPetroChinaの株式の大部分を保有しています。この巨大プロジェクトの第一弾(WEPP1)は2004年に始まり、新疆ウイグル自治区のタリム盆地にあるガス田から長江デルタ地域に電力生産用の天然ガスを供給しています。2008年に第2パイプラインの建設が始まりましたが、このパイプラインは第1パイプラインに一部平行しており、相互に接続されています。第2パイプラインは新疆ウイグル自治区から広州市までまたがっており、さらに2つのパイプラインの開発が控えています。いずれも、設計上、数十億立方メートルにも及ぶガスを供給することができ、中国の産業や人口密集地における急増するエネルギー需要を満たしています。第2パイプライン(WEPP II)の建設は2008年2月に始まり、2012年10月に第3パイプライン(WEPP III)の起工が行われました。WEPP IVは依然として計画の段階です。


チャレンジ

このプロジェクトでは、当初から最終段階まで、IQインテリジェント非貫通型アクチュエータを採用しました。これらのアクチュエータは、10年以上に渡り、プロジェクトのあらゆる段階で設置され、圧縮ステーションやマニフォールド及び保管施設のバルブを制御しています。

第1パイプラインの建設が始まった2002年の段階でIQインテリジェントバルブアクチュエータの技術は約10年存続存在しており、多くの産業で確立されました。第1世代のIQアクチュエータに取って代わり、IQ Mark 2が登場しましたが、このMark 2は、第1世代のIQを模倣し始めた他社製の製品には見られない新機能を搭載しています。

ロトルクのアクチュエータは、世界の石油・ガス産業で確かな実績を誇るデータロギングやデータ転送といった機能を内蔵しており、カバーを取り外さずに設定、試運転・調整することができますが、当時、このようなアクチュエータを製造していたのはロトルクだけでした。IQアクチュエータは、赤外線によって携帯式設定器と通信を行う非貫通データ通信(カバーを取り外さずに設定及び試運転・調整が可能)の先駆者であり、1993年のリリースから2000年までロトルクの電動アクチュエータの売り上げの大部分を占めていました。

2006年までには、アクチュエータと設定器間の相互通信が可能になり、アクチュエータの設定データを引き出したり別のアクチュエータに転送したりできるようになりました。これにより、ほぼ同一の試運転や設定が必要となる場合、かなりの時間を節約することができます。また、データをパソコンにダウンロードして、調整の上、設定器を用いてアクチュエータに再転送することもできます。

各アクチュエータに内蔵されたデータロガー機能により、全開・全閉の両方向におけるトルクの詳細状況など、試運転のデータ履歴やそれ以降のバルブの動作情報を記録することが可能です。このようなデータは、パソコンでIQ Insightというソフトウェアを起動することにより抽出したり解析したりすることができるため、バルブの性能を正確に評価したり、潜在的な動作問題を見つけ出すことができます。また、効率的にアセットマネジメントの計画を立てることができるため、過度に周到なメンテナンス計画を立てる必要もありませんし、突発的なプロセス中断のリスクも最小まで減らすことができます。データは、携帯式の設定器か、アクチュエータに直接接続したパソコンでソフトウェアを起動してダウンロードすることが可能です。IQは、パイプラインのバルブの遮断だけに留まらず、低圧でガスを下流の供給ネットワークに移送することが可能な1次基地の調整弁の制御も行っています。

この例では、IQMモジュレーティング用アクチュエータがサイズ100mmから250mmのアキシャルフロー制御弁を制御しています。これらのClass 600バルブは非常に重要な“第1”バルブであり、主要輸送ライン(動作圧力は最大9.9Mpaまで)から下流(分配圧力は2.5Mpa~4.5Mpaまで)までのガス圧力を低減します。第1パイプラインだけでも、50以上ものこういった第1基地がパイプラインのルートに沿って建てられています。(バルブはMokveld社製)

 

 


ソリューション

IQアクチュエータは、非貫通(電気部のカバーを取り外してリミットスイッチの設定やトルクの設定を行う必要がない)であるため、ユーザーに取ってたくさんのメリットがあります。試運転・調整プロセスの効率の向上は勿論、この非貫通の技術により、湿気や埃による汚染から端子部品を永久に確実に保護することができるため、パイプラインのルート周辺の過酷な環境でも高い信頼性を発揮します。さらに、この技術は、電源ケーブル及び制御ケーブルの配線用の“ダブルシール”端子部品により、強化されています。各端子部は密封されており、アクチュエータの本体の状況に影響されないため、端子カバーを取り外しても内部の電気部品は保護されています。結果、IQは危険区域適合認証を取得し、頑強、耐水、一定時間の浸水可能といった特長を持つようになりました。

新規開発

第1パイプラインの4000キロメートルという長さは、第2パイプラインとその8本の支線の合計の長さの半分にも及びません。同様に、第1パイプラインの輸送量(年間17億立方メートル)は、大口径の第2パイプラインの輸送量(年間300億立方メートル)に圧倒されてきました。

第2パイプラインと輸送量は同等ですが、第3パイプラインの建設が現在進行中であり、2013年以降は、このプロジェクト向けに次世代のIQアクチュエータ“IQ3”を提供しています。最初の2本の東西パイプラインのようなプロジェクトから得た経験やフィードバックが糧となり、ロトルクは、追加機能や、既存の設備及び制御プロトコルにぴったりと適合するアセットマネジメント機能をリリースしました。 現場と制御ルームの両方からよりたくさんのデータにアクセスしたい、というエンドユーザー様のご希望に応え、データロギングや表示及び通信機能を更に進化させました。

IQ3は、長年の信頼性、低メンテナンスコスト、低ランニングコストを実現する上で特に重要となる3つの特長を有しています。

1つ目は、アクチュエータの現場用開度表示窓が多機能で、現場で開度を表示することができ、バルブやアクチュエータの状態、アクチュエータの設定用メニュー画面、故障診断やアセットマネジメントの情報等が表示されることです。かつては単なる現場用開度表示計だった物が今ではプラントプロセスへの窓口となっています。現場で開度を表示するだけでなく、アクチュエータの表示窓には設定や校正をサポートするグラフィックインターフェースを採用しており、アクチュエータの性能に関する重要なデータをバルブ側に表示します。この表示されたデータにより、ユーザーはバルブの動作状況を判断したり、問題が発生する時期を予測することができます。

表示画面自体が非常に広い視野角を持つダブルディスプレイになっています。前面のセグメントディスプレイでアクチュエータを設定したり操作することができ、2つ目のディスプレイで詳細な診断データや動作データを表示し続けることができるため、プロセスを閲覧することが可能です。状態診断のグラフ、同時要求と開度、トルクと開度、アクチュエータの設定など、操作者が常に確認したい情報に合わせて画面を4つ選択することができます。バルブの開度は小数第一位まで表示されるため、正確で分解能の高い診断解析が可能です。状態診断のグラフから画面を切り替えて、プロセスの画面を表示し、バルブのトルクグラフを表示したりリアルタイムで状況を解析することができます。

2つ目は、ウォームやホイールにより、アクチュエータの出力トルクを正確に測定することができることです。ウォームシャフトの軸力は常にウォームホイールが発生させるトルクに比例しており、長期使用によるギア部の効率の変化に影響を受けることはありません。トルクの測定は、時と共に摩耗したり特性が変化する皿バネやその他諸々の機械式デバイスではなく、力変換器で行っています。ストローク中のバルブのトルクの状態は、試運転・調整中の“履歴”としてデータロガーに記録され、その後もバルブの動作の度に記録されるため、この特長はアセットマネジメントにとって非常に重要です。このデータはメンテナンスの計画時に用いる重要情報となります。

3つ目は、信頼性が高く持続可能なバルブ制御は、アクチュエータによる正確で繰返し性の高い位置計測に左右されるということです。これを達成するため、IQ3は特許取得のアブソリュートエンコーダを採用しています。アブソリュートエンコーダとは、電気機械式の位置計測機器であり、ギアの相対位置を検出してアクチュエータの出力位置、そしてそれによってバルブの開度を計算します。このアブソリュートエンコーダのメリットは、開度の変化を追跡するのに動力を必要としないことで、デメリットは、アブソリュートエンコーダを搭載することで仕組みが複雑になり、信頼性が低下することです。

最新の技術を駆使したこと及び数年に渡り動作試験を実施したことにより、IQのアブソリュートエンコーダはこれらの問題を克服しています。このアブソリュートエンコーダは無接点で、動作部が4つしかなく、高い分解能と冗長性及び自己チェック機能により、最高8000回の出力回転を計測することができます。 IQはその設計により、開度計測の信頼性が高く、電源の接続の有無に関わらず開度を計測することができます。

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